空と海と、願いごと

「真凛とはさっき、そこの階段で会ったんだ。おれが散歩から帰ってきたら、ひとりで浜辺に降りようとしてたから止めた。暗くなってきたら、危ないし」

 うまくウソがつけないわたしの代わりに、海くんが説明してくれる。

 無表情で淡々と話す海くんに、空は少し疑いの目を向けながらも「ふーん」と言った。それからわたしの手をつかんで引っ張ると、いつもの空らしく、にこっと明るく笑いかけてくる。

「浜辺に行くときは、おれに声かけてよ。おれも真凛と一緒に散歩したい。それに、夕方じゃなくても浜辺でひとりにするのは心配だし」

「うん……」

 空の笑顔に、わたしはできるだけ不自然にならないように笑顔を返した。

 空は、わたしがまた浜辺でパニックを起こさないか心配してくれてるんだと思う。

 海くんがいなければ、わたしの胸は、空の優しい言葉に純粋に胸をときめかせていたかもしれない。告白してくれた空のことを、素直に「好き」だと感じたかもしれない。だけど……。

 ちらっと海くんに視線を向けると、彼がわたしに微笑みかけるようにほんの少しだけ口角を引き上げた。その表情に、ドクンと胸が鳴る。