願い事が『ある』、じゃなくて。『あった』。
そんな言い方する海くんの願い事は、幸せになれるというさくら貝やおとぎ話に出てくる人魚に頼りたくなるくらい、切実で、叶えることすら難しいものだったのかもしれない。
「だったら、そのさくら貝は、海くんにまた願い事ができたときまで大切にもっておきなよ。わたしには今、本気で叶えたい願い事もないし。もしほんとうに、どうしても叶えたい願い事ができたときは、『幸せ』のさくら貝を自分で探してみる。前の学校の友達のことや好きだった人のこと、心配してくれてありがとう」
にこっと笑いかけると、海くんがククッと笑った。それは、さっきまでの淋しそうな笑顔と違ってなんだか楽しそうで。ちょっとほっとする。
「変わったなって言ったけど、やっぱり変わんないな」
「え?」
「いや、なにも。ていうか、暗くなるし、そろそろ帰る?」
気付けばいつのまにか、太陽は水平線の向こうに完全に沈みきっていて。空の色が濃くなり始めている。
「行こう。足元見えなくなったら危ないから」
そう言うと、海くんが来たときと同じようにわたしを誘導するように岩場を歩き始めた。
そんな言い方する海くんの願い事は、幸せになれるというさくら貝やおとぎ話に出てくる人魚に頼りたくなるくらい、切実で、叶えることすら難しいものだったのかもしれない。
「だったら、そのさくら貝は、海くんにまた願い事ができたときまで大切にもっておきなよ。わたしには今、本気で叶えたい願い事もないし。もしほんとうに、どうしても叶えたい願い事ができたときは、『幸せ』のさくら貝を自分で探してみる。前の学校の友達のことや好きだった人のこと、心配してくれてありがとう」
にこっと笑いかけると、海くんがククッと笑った。それは、さっきまでの淋しそうな笑顔と違ってなんだか楽しそうで。ちょっとほっとする。
「変わったなって言ったけど、やっぱり変わんないな」
「え?」
「いや、なにも。ていうか、暗くなるし、そろそろ帰る?」
気付けばいつのまにか、太陽は水平線の向こうに完全に沈みきっていて。空の色が濃くなり始めている。
「行こう。足元見えなくなったら危ないから」
そう言うと、海くんが来たときと同じようにわたしを誘導するように岩場を歩き始めた。



