空と海と、願いごと

 ここに引っ越してきたときのわたしは、ただの駄々っ子だった。

 でも、そうやってパパやママに反抗したくなるくらい、東京の家や前の学校を離れるのが嫌だった。できることなら、すぐに東京に帰りたかった。

 でも……。

「正直言うとね、わたしはこんな田舎の町には来たくなかった。知らない男の子たちとオンボロな民宿で暮らすのなんて絶対嫌だったし、周りには何にもないし。ここに来た瞬間、今すぐ東京に帰りたいって思った」

「ほんとに、すごい正直だな」

 わたしの発言に、海くんが苦笑いする。

「はは、ごめん。昔より性格悪くなった、って思った?」

「いや、べつに」

 気になって聞いてみたら、海くんが笑って流してくれて、ちょっと安心した。

「ここに来た瞬間はね、ほんとうに帰りたかったんだよ。すごく、すっごく。だけど、今は、よくわかんなくなってる」

 海くんには、転入初日のかっこ悪いところも、性格の悪いところも見られちゃってるし。今さら、隠すことは何もない。素直な本音を口にしたら、海くんが意外そうに目を見開いた。