空と海と、願いごと

「足元に気を付けて、ゆっくりついてきて」

 わたしが岩をよじ登ると、海くんが岩場のさらに奥へと進んでいく。

 ゴツゴツして歩きにくい岩の上を必死に海くんについていくと、行き止まりかと思っていたその先に、おとながふたり入れるくらいの狭い洞穴があった。

 海くんといっしょに洞穴の入り口に立って海のほうを見ると、太陽の位置はさっきよりも低くなっていた。

「わあ、綺麗だね」

 オレンジ色に輝く夕陽を見つめてため息を吐くと、海くんが真っ直ぐに沖のほうを指差す。

「真凛、あの小さい岩見える?」

「見えるよ」

 海くんが指差したあたりには、島みたいな小さな岩がひとつ、ぽっかりと浮かんでいる。

「ここから夕陽を見てると、太陽があの岩の上にちょうどのっかったみたいに見える瞬間があって……。なんか、ほら、ダイヤモンド富士って写真で見たことない? それっぽい感じになんの」

「そうなの?」

「うん。ホンモノに比べたらショボイとは思うけど、あの岩と重なった瞬間は、太陽の光が一瞬だけどダイヤモンドみたいにキラキラ〜って輝いて見えて綺麗だよ」

「へえー」

 海くんの話を聞いているうちに、太陽の高度がどんどん下がってきて。太陽の下のほうが、沖に浮かぶ小さな岩と重なる。その瞬間、海くんが言っていたみたいに、太陽がキラキラ〜っとダイヤモンドみたいに輝いて見えた。