海くんがわたしを連れて行ってくれたのは、『たいようの家』の裏にある浜辺だった。

「ここのビーチ、夕陽の綺麗なスポットなの?」

『たいようの家』はオンボロだけど、ビーチで映える夕陽が見れるなら、ちょっとはウリになるかも。いい写真が撮れたら、パパに情報提供してあげよう。

 水平線の向こうに広がる、オレンジ色と群青と紫のグラデーションの空。写真を撮るためにスマホのカメラを開こうとすると、「真凛、こっち」と、海くんに呼ばれた。

 海くんが向かっていくのは、浜辺の西側の岩場のほう。ビーチはそこでいったん途切れて行き止まりになっているのに、海くんはゴツゴツした岩に足をかけて上っていく。

「真凛、来れる?」

 先に岩場に上がった海くんが、わたしを振り返る。

「た、たぶん……」

 ちょっと不安に思いつつ、靴のつま先部分を岩のへこんだところに引っかける。

 岩に手をついて力を踏ん張れば、なんとか上れそうではあるけど……。わたしは、浜辺から夕陽を見るのでも充分だけどな。

「この岩に上ったほうが、夕陽がよく見えるの? 危なくない?」

「上っていうか、この岩の向こう側から見える景色がおすすめなんだよ。たぶん、真凛なら今でも行ける」

「え?」

 不安顔で見上げると、わたしに近付いてしゃがんだ海くんが、腕を引っ張って助けてくれた。