空と海と、願いごと

「なんか、朝もこんなシチュエーションあったよな」

「そうだね」

 今朝学校に行くときも、海くんと玄関で、こんなふうにぶつかりそうになったのだ。

 わたしの前で、まだクスクス笑っている海くんは、洗濯物を取り込みに来たところだったみたいで。タオルやらTシャツを両腕いっぱいに抱えている。

「そうやって、いつも掃除や家事を手伝ってるの?」

「ああ、まあ。だいたい」

「さっき、陸くんも玄関の掃除してたよ。ふたりとも、えらいよね。陸くんは、この民宿を継ぎたいって言ってたけど、海くんも?」

 兄弟で一緒に『たいようの家』を継ごうって考えてたりするのかな。何気なく尋ねると、海くんが曖昧に笑った。

「いや。おれには、これくらいしかできないから。おれのやってることは陸兄と違って、ただの罪滅ぼし」

「え……?」 

 淋しそうに笑う海くんの表情に、ドキリとする。

 罪滅ぼしって……? 何のことかわからず聞き返そうとしたら、

「真凛は屋上に何しに来たの?」

 と、海くんがさらりと話をすり替えた。