空と海と、願いごと

「おれは……、昔から、人とのちょうどいい距離の取り方とか、空気を読むとか、そういうのがよくわかんない。だから、転入初日のあんた以上に、これまでいっぱいやらかしてるよ」

 暉くんが、わたしの隣でぼそっとつぶやく。

「だけど空くんは、おれが何言っても笑って流してくれるから。空くんの前で態度が違うんじゃなくて、空くんの前だとちょうどいい距離の取り方とか空気を読むとか、余計なこと考えなくて済んで落ち着いていられるってだけ」

 むっとした顔で黙秘をつらぬいていた暉くんが、急にそんなことを打ち明けてくるから、ちょっとびっくりした。

「そうなんだ。だったら、なおさら、空と仲直りしなきゃじゃん」

「でも、さすがの空くんも、今回はおれにあきれたかも……」

 うつむいた暉くんが、ちょっと涙目になる。そんなふうに気にしてるなら、昨日の夜に意地を張らずに謝ればよかったのに。

 だけど、昨日の暉くんにはそういうのも難しかったのかもしれない。