「ママね、ずっと前から自分が考えた献立を飲食店で提供してみたいと思ってたんだ。民宿は飲食店とはちょっと違うかもしれないけど、ママもパパと一緒に頑張って、おいしい料理で評判の民宿にしたいな~って思うの。だから、真凛。みんなで引っ越そう」
「いやだよ。わたしだけでもここに残りたい」
『東京でひとり暮らしする』ってさんざん駄々をこねたけど、パパもママも、まだ中学生のわたしのひとり暮らしは認めてくれなくて……。
最後はパパとママに押し切られるようにして、海のある田舎町への引っ越しが決まった。
はぁーっと、また深いため息を吐いていると、
「真凛〜、早くしなさい!」
大きな声でママに呼ばれる。
「はーい……」
わたしはやる気のない返事をすると、だらだらと歩いて部屋を出た。



