そうして6月結婚式。式はミカエル教神殿であげるのだ。
 エミリアは控室でウェディングドレスに着かえた。純白のウェディングドレス。やっと今日は結婚式。エミリアは胸きゅんだった。エミリアは式場へ入った。そこにはタキシード姿のミナミさんがいた。エミリアは胸が高鳴った。ああ、とうとう結婚。ミナミ、エミリアの親族、聖騎士団がいた。
 看護隊もいた。なんか雰囲気が悪い。ひそひそしている。なによ。もう結婚しちゃうんだから。
 ミカエル教神官がいた。黒い服を着ている。
 そうして結婚式がはじまった。
 「あなたはエミリアを愛しますか」
 と、ミカエル教神官がミナミに言った。
 「はい。愛します」
 ミナミはきっぱり言った。そうして神官はエミリアに向いた。
 「あなたはミナミを愛しますか」
 「はい」エミリアは大きく返事した。
 「では指輪を」
 と、神官。
 ミナミがエミリアにダイヤモンドの指輪をはめた。
 わー。エミリアは指輪がはめられた手をまじまじと見た。
 「ではお互い、誓いのキスを」
 と、神官。
 エミリアはどきどきした。人生初めてのキスだ。
 長身のミナミが上方から顔を近づけてくる。エミリアは目をつむった。ミナミの唇が自分の唇についた。やわらかかった。まるで女性のようだった。
 聖騎士が騒いでいる。ミナミは聖騎士たちに笑顔をおくった。しかし看護隊は何やらささやいていた。何よ。まだ嫉妬しているの。
 式が終わった。
 親族や聖騎士が二人に集まってくる。ミナミの周りには若い聖騎士が集まっていた。エミリアのまわりにも両親が親族が集まってくる。
 ふと、エミリアは看護隊を見た。やはりひそひそしている。何よ、もう、嫉妬深いんだから。ミナミさんの同僚なんて、あんなにミナミさんを祝福してんじゃん。
 「やあ、ほんとに結婚するとは思わなかったぜ」
 と、聖騎士の若い男がミナミに言った。
 「まさか、ほんとに女と結婚しちまうとはな」
 と、聖騎士。
 え。女と結婚。女。エミリアはいぶかしんだ。ひょっとして、ミナミさんは男しか愛せないとか。だから女と結婚するとは、とか言ってるわけ!ミナミさんは、LGBTQ?????。私はいろいろ妄想した。「蛇いちご」という雑誌にのっていた小説を思い出した。
 女性が結婚した男性は実はLGBTQ。女性は夫に男性と浮気されるのだ。夫を男にとられるのだ。そんなことを妄想した。これって、悪役令嬢のおしおきじゃあ。
 「ミナミさん、あの」
 と、エミリア。
 「え、何?」
 「ミナミさんってひょっとして男性しか愛せないとか」
 ミナミはほかの聖騎士と顔を見合わせた。
 「あ、いや、逆。男性が愛せないんだ」
 エミリアはほっと胸をなでおろした。よかった。むしろ男性が愛せないのか。
 「ほんと、ミナミは男が愛せないんだよなあ」
 と、タキシードを着た聖騎士。
 「女なのになあ」
 と、別の聖騎士。
 え。
 「今なんて?」
 と、エミリア。
 「あれ、言ってなかった。俺、女なんだ」
 と、ミナミ。
 「え」
 「女」
 「は?」
 「だから、俺、からだが女なわけ」
 「ええええええええええ」
 つ、つまり、これって同性婚?私が結婚したのは、同性!ということは人生初のキスの相手は女性ええええええ。
 これって、悪役令嬢のお仕置きいいいいいいいい。あ、看護隊の人たちがなんかにらんできてたのは、こういうことおおおおお。
 エミリアは看護隊の女性たちを見た。じっとこちらを見ている。それみたことかって感じ。
 「エミリアさん、幸せになろうね」
 と、ミナミ。
 「う・・・・・・、うん」