様子がおかしいと気が付いたときからもう何度も聞いている。だけど答えはいつも同じだ。

 彼女は静かに微笑んでこう言う。



「佑馬には関係ないから」



 別に何もないよ、とは言わない。自分は本調子でないことも、その原因もちゃんと自覚がある。

 その上であんな風に言われてしまえば問い詰めるのも気が引けるので、毎度「そうか」とうなずいてそれ以上は聞かない。

 そのうち莉桜の方から話してくれる気になるのを期待して。


 ……だけど、もう我慢できなかった。



「関係ないって何だ」


「……そのままの意味だよ」


「僕は愚痴をこぼす相手にすらしてもらえないのか?」



 どんな弱音だって、どんなにくだらないことだって、莉桜の話は全部聞きたい。

 聞かせてくれよ、莉桜。



「……本当に、佑馬には関係ない話」



 莉桜はふいと目を逸らして、胸の辺りでぎゅっと拳を握った。



「でも、うん。お弁当食べながら独り言を言ったら、耳に入っちゃうよね」