◇
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明るく賑わう繫華街の端の方に、佑馬の行きつけの居酒屋はある。
年季の入った外観に反して中は新しく、安価で味も良い。酒を飲める歳になって以来ずっと通っている。
顔なじみの店員は佑馬を見ると、待ち合わせ相手はもう来ていると言って半個室の席へ案内した。
「遅くなってすみません卓さん」
「打ち合わせが長引いてたんだろ。気にするな」
待っている間、料理に手を付けるでもなくテーブルに原稿用紙を広げていた男は、佑馬の声に視線を上げた。
高島卓。
佑馬たちが高校一年生だったときの文芸部部長。現在は佑馬の同業者だ。
「卓さん、仕事はどうです?」
「どっちの話だ?」
「どっちも」
同業者とは言っても、卓は佑馬と違って専業の作家ではなく兼業作家。一般企業──それも、皆が羨む一流企業に勤める傍ら執筆している。
卓は原稿用紙を鞄にしまいつつ自嘲気味に笑った。
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明るく賑わう繫華街の端の方に、佑馬の行きつけの居酒屋はある。
年季の入った外観に反して中は新しく、安価で味も良い。酒を飲める歳になって以来ずっと通っている。
顔なじみの店員は佑馬を見ると、待ち合わせ相手はもう来ていると言って半個室の席へ案内した。
「遅くなってすみません卓さん」
「打ち合わせが長引いてたんだろ。気にするな」
待っている間、料理に手を付けるでもなくテーブルに原稿用紙を広げていた男は、佑馬の声に視線を上げた。
高島卓。
佑馬たちが高校一年生だったときの文芸部部長。現在は佑馬の同業者だ。
「卓さん、仕事はどうです?」
「どっちの話だ?」
「どっちも」
同業者とは言っても、卓は佑馬と違って専業の作家ではなく兼業作家。一般企業──それも、皆が羨む一流企業に勤める傍ら執筆している。
卓は原稿用紙を鞄にしまいつつ自嘲気味に笑った。