リサ。名前まで少し似ている。
サインと日付と眼鏡のイラスト。これが皆共通のワンセットだが、佑馬は今回だけ「リサさんへ」と宛名を付け足した。
聞き間違えることが少なくないため、知り合いなど確実に名前がわかる場合でない限り、宛名は入れないようにしている。
だからこれは特別。他の人に見られたらズルいと言われるだろうか。
……まあ、列に並んでいたらここでの会話なんてほぼ聞こえないし、他の人のサインなんて全く見えない。気付かれないだろう。
「応援ありがとうございます、リサさん」
佑馬が本を手渡すと、リサは丸い目をさらに丸く見開く。
じわじわ涙をためていたその目から、とうとうポロリと一滴零れ落ちた。
「ありがと、ございます……」
サインの入った小説を、本当に本当に大事そうに抱きしめる。
「入院中……外に出られないときも……ずっと、櫻田先生の小説に励まされてきました……。先生の小説はあったかくて……ちゃんと生きようって気持ちになれるんです」