僕が莉桜と知り合ったきっかけ自体は、ごくありふれたものだった。

 うちの近所に引っ越してきた莉桜の一家に色々と世話を焼いた母が、自分の子どもたちの中で莉桜と同い年だった僕を引き合わせたのだ。

 当時僕らはまだ未就学児だったが、ハキハキとしゃべる気の強そうな彼女に圧倒されたのは、うすぼんやりと覚えている。


 そして、莉桜の病気のことについても母親から簡潔に教えられた。



「莉桜ちゃんね、身体が弱くてできないことが多いの。だからちゃんと気にかけてあげるのよ」



 この気の強そうな子が病弱、というのは今一つピンとこなかった。だが母の言う通り、莉桜は確かにできないことが多かった。

 まず、当時の僕が全員通うものだと信じて疑わなかった幼稚園に、莉桜は行かなかった。僕は母親同士が仲良くなったおかげで顔を合わせる機会はあったものの、当然他に同い年の友達がいる様子はなかった。