「でもいいなぁ。佑馬先生にそこまで想ってもらえる幼なじみさん」


「どこが……」


「初恋の人……っていうか、唯一の人、って感じですよね。何なら、亡くなられた今でも好きなんじゃないですか?」



 加菜に指摘されて、佑馬は唇を結び軽くうつむいた。この有能な編集者は鋭いところがあって困る。

 8年。いい加減立ち直るべきなのは理解している。それでも、あの子は佑馬にとってどうしようもなく特別だった。



「あ、あのぉ。出過ぎたことごめんなさい先生」



 思い出に沈み黙り込んだ佑馬を見て、加菜は気分を害してしまったのかと焦ったらしい。慌てて謝罪してくる。

 そういうわけでは全くなかったので、佑馬はすぐ表情を緩めてみせた。



「いえ、大丈夫です」


「えと、その初恋吹っ切りたくなったら言ってくださいね! あたし、顔の広い友達がいるので、その子に頼んで先生のために合コンとか開いちゃいますよ!」


「あはは。ありがとうございます」