佑馬の担当編集である山本加菜(かな)は、今年で27歳になるはずだが、大学生だと言われてもすんなり信じてしまうぐらいあどけなく可愛らしい顔立ちをしている。

 加えて話し方は常に高い声で甘えた調子。いったいこれまで何人の男たちが骨抜きにされてきたのだろう……と打ち合わせで顔を合わせるたび思う。



「ねえ先生。桜、このあたりでもやっと咲き始めたみたいですね!」


「そうですね。標本木の花が五輪咲いたって、今朝のニュースで見ました」


「今年も編集部でお花見するのかなぁ。あ、いいこと考えた。今年は佑馬先生も参加しませんか、お花見っ!」


「お誘いありがとうございます。でもそういう場は少し苦手なので」


「そっかぁ残念。じゃあ、あたしと二人きりのお花見だったらどうです? ……なんて無駄話してる場合じゃないですね、うふふ、お仕事しないと。えっと今日は次回作の話と週末開催のサイン会の話をしにきたんでしたね」