「そういえばある人から聞いたんですけど……。山本さん、私の前ではこんな感じでも、男性の前だとずいぶん冷めたクールキャラだそうじゃないですか。新人男性作家もう何人も泣かせてるって」



 莉桜の言葉に、加菜の顔からすぐさま笑みが消え、表情が固まる。



「なぜそれを……」


「男性が苦手なんですか?」


「べ、別にそんなんじゃ……ないことはないけど……」



 加菜はごにょごにょと口ごもったかと思うと、やがてわっと手で顔を覆った。



「そうですよ! 男は苦手だから作家だろうが上司だろうが、舐められないように強気の態度取ってます! もうっ……莉桜先生には、ただただ可愛い女の子ってイメージ持っておいてほしかったのに!」


「あは、なんですかそれ」


「ううぅ……ていうか誰よぉ、あたしの憧れ莉桜先生にそんな話吹き込んだのはぁ! ……わかりました、あたしのこと知ってて莉桜先生と交流のある人といえば、あのうだつが上がらない兼業作家ですね! そうでしょ!」