「あんな綺麗な子にここまで想ってもらえるなんて、佑馬は幸せ者だと思わない? むしろ、あの子にはちょっと贅沢すぎるぐらいよ」
「それは間違いないね。8年も経ってまだ莉桜さんを思い悩ませ続けてるとか、お兄ちゃんのくせに生意気」
佑那がにやっと笑うのを見て、裕美子もつられて笑う。
何事に対してもどこか冷めていて、こだわりの薄かった佑馬。
そんなあの子が珍しく、熱く必死になるときは、決まって莉桜に関係していた。それぐらいあの子は莉桜のことを愛していた。
その愛する莉桜が、いつまでも自分に囚われて暗い顔をしていることを、佑馬は絶対に望まない。
──莉桜ちゃんのこと、あんたの呪縛から解放しといてあげたからね。これで文句ないでしょ?
裕美子は静かに目を閉じ、そんな風に心の中で天国の息子にそう語りかけた。