莉桜のせいで佑馬は死に、佑馬の死のおかげで莉桜は生きている。


 そう感じて、莉桜のことを恨んだ時期もあった。莉桜を恨む自分が嫌だった。彼女が何も悪くないことは理解していたからだ。

 あの頃ちょうど悠木家が引っ越していって家が遠くなったのは幸いだった。きっと直接顔を見ていたら、何も悪くない彼女たちに理不尽な怒りをぶつけてしまっていただろう。


 でも今は、そういった感情を全て乗り越えて……莉桜には本気で感謝している。



「意地悪で嘘を教えたわけじゃないわよ。莉桜ちゃんはこれまで、もう十分すぎるぐらいあの子のことを考えてくれたから、そろそろ忘れさせてあげたいと思ったのよ」



 もし莉桜が、佑馬のことなどとっくに忘れて幸せそうに生きていたのなら、今日顔を見たときに怒りが蘇っていたかもしれない。

 だけど彼女は佑馬の名前を使い、装いを真似ることで、佑馬のことをひと時たりとも忘れまいとしていた。その気持ちは痛々しく伝わってきた。