……佑馬、今年は来るのがちょっと遅くなったね。ごめん。
きっと佑馬はそんな細かいことで不満を言ったりはしないだろうとは思いつつ、莉桜は心の中で静かに語りかける。
……聞いてよ。デビュー作、ドラマ化の話が来たんだよ。すごくない?
……まあ、キミ──本当の櫻田佑馬なら、もっと早くにそんな話も来てただろうけどさ。
……それからね、卓さんに結婚を申し込まれたよ。あは、妬いた? 妬いたでしょ。
……でもさすがに断ろうかなって思ってるんだ。
……ねえ佑馬。私、あれから佑馬みたいに好きになれる人が全然できないんだけど。もしかしてキミ、私の中にあった誰かに恋する気持ち、あの世に行くついでに全部持ってったんじゃないだろうな。
……おかげでこの歳になっても初恋を引きずってる痛い女だよ。担当編集の山本さんは「一途で素敵」って言ってくれるけど。