花を買った。店で一番最初に目に入ったユリの花。

 本当は本人が一番好きだった花を供えるのが良いのだろうけれど、思えば莉桜は佑馬が何の花を好んでいたのか知らなかった。

 だから毎回、買うのは結局その日一番綺麗だと思った花だ。

 知らないのは好きな花だけじゃない。以前は佑馬のことなら何でもわかっているような気でいたけれど、そんなものは幻想だ。

 佑馬からのあの手紙にも莉桜に対して同じようなことが書いてあったが、今はその気持ちがよくわかる。実は知らないことの方が多い。


 軽く掃除をするつもりで雑巾を持ってきたりはしたものの、佑馬の眠る墓は綺麗に保たれていた。きっと彼の家族が定期的に訪れているのだろう。


 打ち水をして花を供え、線香をあげる。



「……」



 周りに墓参りに来たらしき人の姿はない。

 莉桜は静かに手を合わせ、一人佑馬に向き合った。