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莉桜が元文芸部部長、高島卓と再会したのは、数年前にあったとある出版社主催のパーティー会場だった。
「お前っ……櫻田の、彼女……?」
莉桜の姿を見るなり、卓は驚愕の面持ちでそう言った。
莉桜は高校2年に進学してから、正式に文芸部へ入部届を出していた。だが、卓が在学していた頃にはまだ部員ではなかったため、もしかしたら卓は莉桜の名前を知らないのではないかと思い当たる。
「悠木莉桜、といいます。そういう貴方は高島先輩ですね。お久しぶりです」
「あ、ああ……」
「もしかして誰かに僕のこと、『櫻田佑馬だ』って紹介されました? ……実はその名前がペンネームなんです。高校で文芸部に入ってからずっとこの名前を使ってるんです」
「……僕?」
「あ、この一人称はキャラ作りの一環。ちなみに眼鏡を付けてるのも同じ理由で、実際は度なしです」
SNSのが大きく発展したこの時代。宣伝の場で作品だけでなく作家自身も売り出すというのは、名前を覚えてもらうのに悪くない方法だった。
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莉桜が元文芸部部長、高島卓と再会したのは、数年前にあったとある出版社主催のパーティー会場だった。
「お前っ……櫻田の、彼女……?」
莉桜の姿を見るなり、卓は驚愕の面持ちでそう言った。
莉桜は高校2年に進学してから、正式に文芸部へ入部届を出していた。だが、卓が在学していた頃にはまだ部員ではなかったため、もしかしたら卓は莉桜の名前を知らないのではないかと思い当たる。
「悠木莉桜、といいます。そういう貴方は高島先輩ですね。お久しぶりです」
「あ、ああ……」
「もしかして誰かに僕のこと、『櫻田佑馬だ』って紹介されました? ……実はその名前がペンネームなんです。高校で文芸部に入ってからずっとこの名前を使ってるんです」
「……僕?」
「あ、この一人称はキャラ作りの一環。ちなみに眼鏡を付けてるのも同じ理由で、実際は度なしです」
SNSのが大きく発展したこの時代。宣伝の場で作品だけでなく作家自身も売り出すというのは、名前を覚えてもらうのに悪くない方法だった。