脳死した状態は心臓がまだ動いており、見た目からはまさか死んでいるとは思えないそうだ。

 現在の医療では100%回復することはないというが、周りは気持ちの面でなかなかそれを受け入れられないのだと聞く。


 ドナーが現れるのを期待するということは、誰かの死を待ち望むということ。そんなことを望むなんて罪でしかないと思っていた。だから、あまり考えないようにしていた。

 だけど実際に移植が可能だと言われたら、喜ぶなという方が難しい。



「私……普通に、皆と同じように生きられるかもしれないの?」


「ええ……」


「本当の本当に?」


「本当よ。……っ、ごめんね。わたしが強く産んであげられなかったせいで苦しい思いをさせてきて、苦労をさせて、ごめんね、莉桜」


「……ううん。ううん。私、お母さんのこと恨んだことなんてないよ。一回もないよ。ねえ、もし移植手術が成功したらさ、今まで私のせいで行けなかった家族旅行、たくさん行こうね」