◇
・
「莉桜。落ち着いて聞いて」
手術が翌日に迫った日。
いい加減ナーバスになっていた莉桜に、母親は病室に入ってくるなり興奮を隠しきれない様子で言った。
「何? 落ち着いてないのはお母さんじゃん」
「ああ、そうね。ごめんね」
莉桜は自分の母親のことを「私よりもか弱くて悲観的な人」と評価していた。
そんな母親が珍しく顔を上気させている。それだけで、何やらとんでもないことが起こったのだと伝わり、ごくりと唾を飲み込んだ。
「移植手術がね、できるかもしれないって」
「……え?」
「莉桜ちゃんに適合するドナーが見つかったのよ!」
莉桜はもう一度「え?」と声を上げる。
心臓移植。
莉桜の抱えている病気を完治させる唯一の方法。
期待したことが無かったわけではない。だけど、望みは薄いと思っていた。
心臓のドナーと成り得るのは、心停止していない死亡者、すなわち脳死の人に限られる。
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「莉桜。落ち着いて聞いて」
手術が翌日に迫った日。
いい加減ナーバスになっていた莉桜に、母親は病室に入ってくるなり興奮を隠しきれない様子で言った。
「何? 落ち着いてないのはお母さんじゃん」
「ああ、そうね。ごめんね」
莉桜は自分の母親のことを「私よりもか弱くて悲観的な人」と評価していた。
そんな母親が珍しく顔を上気させている。それだけで、何やらとんでもないことが起こったのだと伝わり、ごくりと唾を飲み込んだ。
「移植手術がね、できるかもしれないって」
「……え?」
「莉桜ちゃんに適合するドナーが見つかったのよ!」
莉桜はもう一度「え?」と声を上げる。
心臓移植。
莉桜の抱えている病気を完治させる唯一の方法。
期待したことが無かったわけではない。だけど、望みは薄いと思っていた。
心臓のドナーと成り得るのは、心停止していない死亡者、すなわち脳死の人に限られる。