「そういえば、櫻田の彼女は今日来てないのか?」
わいわい談笑しながら個包装のクッキーを五つほど開けた頃、先輩はふと思い出したように聞いてきた。
その言葉に他の部員たちも「言われてみれば……」という表情をする。
「莉桜ちゃん、先月ぐらいからパタッと来なくなったよね。何かあったの?」
「……まあ」
「もしや別れた? あんなにラブラブだったのに!」
「いつまでその設定引っ張るんですか。そもそも付き合ってませんので」
授業をサボって外出し、救急車で運ばれたあの寒い日。あれ以降、莉桜は放課後学校に残ることを禁止された。
朝は始業ギリギリに送られて来て、授業が終わればチャイムと同時に教室を出る。
僕と話す機会も、前と比べてかなり減った。無視されているとまでは言わないが、積極的に話しかけてくることはなくなった。