つい先ほど「地元の桜並木に似ている」と思ったが、その感想は改めねばなるまい。地元の桜並木はもっと小ぶりというか控えめというか、有体に言えばショボかった。

 似ていると思ったのは、きっと記憶が美化されているからだ。

 それも当然。あの並木道の桜を見ていた頃は……幼なじみと一緒に過ごした時間は、どうしたって輝いていた。


 佑馬は画素数低めのスマートフォンで、再度撮影を試みる。光の加減とフィルター機能を駆使したおかげで何となく良い感じに映ったような気がする。



「本当に綺麗だ。根本に死体でも埋まってなきゃ割に合わないって思う気持ちもわかるな」



 誰かに聞かれたらギョッとされそうな独り言を呟いて、佑馬は桜のトンネルの下をゆっくりと歩きだした。


 ……だが、ほんの数メートル進んだところでまた足を止めることとなった。