「好きだから」
「拓斗君」
「好きだから」

 茜の目から大粒の涙がぽろりと落ちる。そしてギュッと抱きついてきた。

 拓斗はそれをしっかり受け止めて支えた。

 もう一度キスをし、心で気持ちを感じあおうとした。

「拓斗君」

 拓斗は茜の手を握り、部屋に案内した。

「私でいいの?」
「茜だからいいんだ。神野の件でそれがわかった。茜だからいい。茜は?」
「拓斗君だから好き」

 チュッとキスをする。拓斗は茜を自室に導き、コートを脱がせ、ゆっくりベッドに寝かせて首筋に唇を添わせた。

「あ」
「…………」
「恥ずかしい」
「俺も恥ずかしい。それに俺、経験ないから、その、ヘタだと思うし」
「私も初めてだよ!」
「うん」

 見つめ合う視線が甘くて、熱くて、溶けそうだった。

「好きだから」
「うん、私も好きだから」

 呪文のように何度も呟きつつ、二人は互いの服を脱がせ合い、時間をかけて互いを求めた。そしてゆっくりと男と女の愛の形を知った。

 熱く熱く、どこまでも熱く、互いを焼き尽くしてしまいそうなほど激しい想いと刺激。

 二人を結びつける行為。

 未熟な二人の愛はまだまだ始まったばかりだが、それでも言葉では言い表せない幸せを感じていた。

 その幸せが愛だと気づいていた。