アオハルを走るボクらは、出会いと別れをくり返して。



「桜庭さんはこの絵を誰よりも近くで見ていたから、桜並木を描けていることに気づかなかったんじゃないですか?」


永瀬くんにそう言われて、ハッとする。


そうだ。
絵を描くときは、いつも絵と距離をとりながら全体のバランスを見ていたのに。

いつの間にか基本的なことさえ忘れてしまうほど、視野が狭くなっていたんだ。


「うん、そうだね。でも、どうしてこのことに気づいたの?」

「サッカースクール時代に、よく絵を描くのが好きな女の子がいて。その子はいつもスケッチブックで描くとき、少し離れて全体を確認していたんです」


永瀬くんにそんな知り合いがいたなんて、ちょっと意外だ。


「それを思い出したのは、本館の玄関にある桜庭さんの絵を見たときでした。近くで見ると、桜庭さんの言う通り、何を描いているのかよくわからなかったんですけど。少し離れてみたら全体が見えて、桜並木が浮かび上がってきて。そのときに、桜庭さんはこの状態でずっと絵を描いていたのかなって思ったんです」


その絵は、私が初めてコンクールで賞を取った――桜並木の絵だ。


「当たってましたか?」

「……うん、大当たり」


永瀬くんの質問に答えると、彼はふっと優しい笑みを浮かべた。


「それにしても、私の絵だってよくわかったね」


今日初めて会ったから、私がどんな絵を描くのかなんて知らないはずなのに。