「もう、つらいの。周りから評価される絵を描き続けることが……」
自分の想いを口にした途端、ずっと溜め込んでいた感情が一気に爆発した。
「今まで私の絵が入賞してきたのは、ただのまぐれ……だから、もう誰も私に期待しないでほしい」
そうよ。
私が描きたいのは、“表彰される絵”なんかじゃない。
「私はただ……自分が描きたい絵を自由に描きたいだけなの……っ」
戻れるものなら戻りたい――絵を描くのが心から楽しいと思えた、あのころに。
「俺は絵のことについてさっぱりわからないので、桜庭さんの気持ちをすべてわかってあげることはできません――」
永瀬くんから返ってきた言葉を聞いて、後悔の念が押し寄せる。
そうだよね。
だって、自分にわからないことを相手に求めたって意味がないのに。
また、永瀬くんに迷惑をかけてしまったのかもしれない。
そう思ったら、やっぱり言わなければよかったと後悔する。
「でも、これだけははっきりと言えます。桜庭さんは、自分が思っている通りの絵を描けてるって」
永瀬くんの目が私をとらえて離さない。
その真剣な眼差しに、胸の奥が揺れる。
すると、永瀬くんは3歩ほど大きく後ろに下がった。



