「……すみません、それはできないです」
その言葉にハッと顔を上げると、永瀬くんがまっすぐにこちらを見つめていた。
「目の前で泣いてる桜庭さんを放っておくなんて、俺にはできません」
永瀬くんの力強い言葉に、弱い心が顔を出す。
「どうして……っ」
ダメ……。
そんなに優しく声をかけられたら、もう止められない。
胸の奥で溜まっていた感情が、とめどなく目からあふれてくる。
「俺はただ知りたいんです。表彰されるほどの絵を描ける桜庭さんが、どうしてそんなに自信がないのか。それがわからないと、今朝のことを桜庭さんが許しても、俺自身が許せないんです」
今朝私の絵を汚してしまったことを、永瀬くんはあれからずっと気にしていたんだ。
私が抱えていることを誰かに話したところで、現状は何も変わらない。
でも、これ以上、永瀬くんに心配をかけたくないなら、素直に話すしか方法はないのだろう。
自分の中で抱え続けるのも、もう限界だった。



