私は、今朝絵を描いていた桜トンネルにやってきた。

活気ある運動部の声が響く中、イーゼルに立てかけたキャンバスを見つめる。

まずは、汚れを隠そう。

ローズドレーとパーマネントホワイトで作った淡いピンク色を、汚れた箇所に塗り重ねていく。

予想以上に、きれいに隠れてホッとした。


だけど、それもつかの間。

……これで、いいのだろうか。

キャンバスに色を置けば置くほど、そんな不安が押し寄せて、絵筆を走らせる手が止まる。


どうしよう……。

このままだと、世界絵画コンクールの応募期日までには絶対に間に合わない。

視界がにじんで、涙がこぼれ落ちる。

最初は、コンクールで入賞したことが絵を描く原動力だった。

だから、結果を出せばもっと成長できると思っていたけれど、あるとき気づいてしまったんだ――結果を出し続けることが、どれほど難しいことなのかを。

でも、そのことを誰にもわかってもらえないのがつらくてたまらない。


もう無理だ……。

これ以上、周りが期待しているような絵を描くことなんて、私にはできない。


今までせき止めていた感情が抑えられず、胸の奥から崩れ出す。

私には、もう絵を描く力なんて残っていないんだ。