アオハルを走るボクらは、出会いと別れをくり返して。



『――でも、桜の花びらを描いていたら、だんだんとただの薄紅色の油絵の具がキャンバスに乗っているだけに見えてきて……だんだん自分が何を描いているのかわからなくなってくるの』


――そっか、絵を見る距離感の原因だったんだ。


思えば、サッカースクール時代に俺を励ましてくれた女の子が、絵を描くのが好きで。
よくスケッチブックから距離を取りながら、丁寧に絵を描いていた。

桜庭さんが自分の絵に自信が持てなかったのは、その感覚を見失っていたからかもしれない。


明日じゃダメだ……。

その間に、桜庭さんが今朝の絵をボツにしてしまう可能性がある。


でも、桜庭さんがどこにいるのかわからないままだ。


……そういえば、今朝の絵も、本館に飾られている絵も、どちらも桜並木の風景画だった。

もし絵の感覚を取り戻すために、桜庭さんが桜並木の絵を描いていたとしたら――。


俺は思いついた場所へ急いで向かった。