「すみません、創作の邪魔をしてしまって」
「いや、そんなことはないから気にしないで」
そう言って、美術部の先輩は優しくほほ笑む。
「ところで、キミは入部希望かな?」
「いいえ、すみません。入部希望ではないのですが、桜庭さんに用事がありまして」
「桜庭って……なぎのことか。なぎなら、絵を描きに行ったよ。どこに行ったのかは知らないけど」
少し戸惑った表情で地面に目を落として、小さくため息をつく先輩。
まるで桜庭さんと同じ顔をしている。
絵を描くのって、本当に大変なんだな……。
部外者の俺がここにいたら、創作の邪魔になってしまう。
「わかりました、ありがとうございます」
最後に「失礼します」と言って、速やかに美術室を出た。



