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旧校舎に着いた俺は、2階へ歩き始めた。
廊下には春の暖かい日差しが差し込み、窓から見える満開の桜がきらきらと輝いている。
教室の扉が並ぶ廊下には、どこか懐かしい木の香りが漂っていた。
この空間は、不思議と時間がゆっくり流れているように感じる。
階段を上がると、さらに静寂が深まった。
周囲には誰もおらず、自分の足音だけが耳に響いている。
2階に着くと、廊下の奥にひっそりと佇む美術室の扉が見えた。
桜庭さんに伝わったらいいんだけど……。
そう思いながら、深呼吸したあとにノックした。
「はい」
中から低い声が返ってきた。
「失礼します」
軽くあいさつをしてからドアを開けると、ひとりの男子生徒がいた。
爽やかで調和のとれた顔立ちをしている彼は、青いネクタイをしている。
そういえば、表彰式のとき、大地さんのネクタイも桜庭さんのリボンも赤色だったな……。
桜坂高校では、学年ごとにネクタイとリボンの色が異なるタータンチェックのデザインが採用されていて、今年度は1年生が青、2年生が緑、そして3年生が赤色になっている。
ということは、この人も大地さんと桜庭さんと同じ3年生だ。
よく見てみると、彼の前にはキャンバスが置かれていた。
きっと、ここで絵を描いていたのだろう。



