「そうだな……“心の底からサッカーを好きなヤツ”かな」
「どうしてそう思うんですか?」
俺もアオもサッカーは大好きだ。
でも、それだけで通用するほど甘い世界ではないということは、サッカースクール時代から知っている。
それなのに、大迫さんはどうしてそれを“才能”と言うのだろう。
「たとえ絶望的な敗北を味わったり、スランプに陥ったりしても、そこから這い上がろうとする原動力は、“サッカーが好きだから”だと思うんだよね」
大迫さんの言葉を聞いた瞬間、懐かしい記憶が蘇る。
それは、俺がサッカースクール時代に“あること”がきっかけでスランプに陥った日のこと――。
『ハルくんがスランプになったのは、下手になったわけじゃなくて、周りのレベルが上がってるからじゃない?』
『だから、諦めずに練習すれば、ハルくんはこれからもっと強くなれるよ』
練習後、いつもサッカースクールに来ていた“ある女の子”が俺を励ましてくれた。
そのとき、もうサッカーをやめようと思っていた俺が、その言葉にどれほど救われたことか――。
その記憶がよみがえる中、ふと桜庭さんの言葉を思い出す。



