「ふざけるなっ!」
突然、九条くんが声を荒げた。
その激しさに、思わず身をすくめてしまう。
「そんなこと言われても全然うれしくないんだよっ! 俺はまだ一度もコンクールで入賞したことなんかないんだからっ!」
怒りで声を震わせる九条くんに、私は動揺してしまった。
九条くんがこんなにも怒りを露わにするところを見たのは初めてだ。
自分の無神経な発言で、九条くんを傷つけてしまったことを自覚する。
「……ごめんなさい」
私は、それ以上何も言えなかった。
「俺はなぎが羨ましいよ。いつも入賞して評価されてるんだから。それなのに、なんで自信がないなんて言うんだよ」
彼の言葉が胸に鋭く突き刺さる。
九条くんは私を信じてくれているのに、その期待に応えられない自分が本当に情けない。
「……九条くんの言う通りだよね。本当にごめんなさい。私……ちょっと頭冷やしてくるね」
リュックに道具一式を詰め込んで、キャンバスを抱える。
「なぎっ!」
九条くんに呼び止められたけど、背後で聞こえる彼の声を振り切るように、私は美術室をあとにした。



