「桜庭さん、今朝の絵を黒く塗りつぶすつもりだったんだって」
「えっ!? またどうして?」
「今、スランプ中だって言ってた」
「スランプ中!? でも、桜庭さんってさっき表彰されてたよな?」
驚きの声を上げるアオに、俺は静かに頷く。
「思うように描けないって……なんか、かなり悩んでる感じだった」
「そうなのか? 絵を見たかんじでは、そんなふうには見えなかったけど……」
俺もアオと同じことを思った。
絵のコンクールについてまったくわからないけれど、全国の大賞を取るということは、サッカーで例えると、全国大会やインターハイで優勝するようなものだろう。
もしそうならば、それだけ桜庭さんには絵は高く評価されているはずだ。
「だから、『桜庭さんには、絵を描く才能がある』って言ったんだ。でも『ただ絵を描くのが好きなだけで、俺が思ってる才能なんて持ってない』って、泣きそうな顔で言われてさ……」
励ますつもりだったのに、かえって桜庭さんを傷つけてしまった。
「なんて言ってあげたらよかったんだろう……」
桜庭さんに寄り添える言葉が言えたらいいんだけど……。
その答えは、いまだに見つからない。



