麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑦/危険色の進路決す!

危険色の針路/その4
夏美



「…あくまで自分は、紅丸さんの根幹理念は理解していたつもりだし、信奉もしてましたよ。アメリカ社会で育った紅丸さんの目には、日本の女性は自己の可能性を眠らせたままで一生を終える社会環境を、笑顔で無意識のうちに享受してしまってると映った。なんとも、もったいないと…。この話をあの人から初めて聞いた時、全身がしびれるほどの衝撃を受けましたわ…」

荒子はここから一気に紅子さんと紅組に傾倒し、集会では紅子さんの言葉に目を輝かせていたのだろう…

「…そこで、中高生の女の子でも、やりたいことはたとえ一人でも行動できる気運を根付かせるムーブメントを、ここ都県境から起こそうと…。それが紅子イズムの原点ですよね。だから私だって、南玉連合が普通の女子中高生に旗を振って、勇気を持ってもらうような存在であるべきとの考えは、ずっと持ち続けていたつもりでした。ところが…」

この辺りで、荒子の言いたいことが何となく見えてきたよ…


...


「…私の唱える路線は、いつの間にか極解されていましたよ。レディースが何の障害もなく結成できる土壌つくりの加速を説く、急進派の象徴になっちゃって…。それに慎重な人達からは、過激だと危険視され、紅丸さんの予測した通り、南玉内部は派閥闘争にどっぷりはまってしまった…」

今日の荒子はいつになく表情の変化が目についた

この時は、何かやるせないような顔つきになっていたわ

「…今から冷静に振り返れば、普通の女の子への旗振りなどはそっちのけで、いつもピリピリして周りをけん制する雰囲気に覆われていましたよね。私の親衛隊などができ、連中はいつもピタリと付いて、その辺の中高生には上から見下す有り様で…」

「…」

もう、私も鷹美も途中で口をはさむ余地はなかった

そうよ、ここは荒子の思いの丈を最後まで聞かなくては…

...


「…私には、その驕りに気付かずに現状からそっぽを向いていたことが、今の南玉をこのザマに導いたんだと思えます。そこで、その自省の念を以って決心しました…」

ここで荒子は隣の鷹美に会釈してから、私を正面に見据え、きっぱりと言い切ったわ

「鷹美がいつも主張していた普通の女子中高生へのフォローアップ…、この紅子イズムの原点をもう一度主眼として、この際組織を再構築したいんです」

”よくぞ言ってくれたわ、荒子!”

私は心の中で思わずそう叫んだ…


...


「それが、南玉内の二つのうち、一方が担う訳ね」

「そうです。こっちは、ケイちゃんが主体になって当たってもらうつもりです。ピュアでフェアな彼女にしかできない…。横田競子なら、界隈の悩める少女たちの受け皿を作り上げて行ってくれるはずです」

荒子…

私は彼女が南玉を立て直す作業に於いて、真っ先に”ここ”へ目線を置いてくれたことに、正直驚いた

なにしろ、文句なくうれしいよ

「ありがとう、荒子…」

私はそう呟いていた…