過激な夏の扉/その13
剣崎
会長との密談は、二人に増殖した”遠縁の娘”に及んだ
「…ケイコとは近々、二人で会おう。ここへ呼べ。”部屋”は麻衣と同等のものを借りてやれ。場所はあまり近くない方がいい。そうだな…、5キロ程度は離しとけ」
「はい…」
「それとつける人間だが…。極力、麻衣と同じモンにしとけ。メインは能勢あたりがいいな、ケイコには」
「あのう、麻衣には倉橋も直でつけてますが…」
「倉橋のイカレは麻衣だけでいい。ケイコには極力接触させるな」
「…はい」
「問題は麻衣だが…。ケガさせた少女へのケジメは、いつ頃になりそうなんだ?」
「おそらく来週中には…」
「そうか…。首尾は即持ってこい。…場合によっては麻衣とも直接会おう」
会長は、いつになくきめ細かい指示を俺に連発した
この”意味”を、俺は汲まなくてはならん…
この時、なぜかそんなことが俺の頭を巡ったよ…
...
「剣崎よう‥、”あの粉”な、正式に違法薬物に指定されたぞ。…それを知ってて、麻衣にもケイコにも差し出したんだ。未成年の高校生にな…。イカレてるのはわかってる…。だが、二人に粉を渡せて俺は心が躍ってるんだ…」
「…」
俺は完全に絶句した…
そして確信した
これはダブルミーニングだと!
...
「会長‥、それってまさか…!」
「おお、剣崎…、その通りだ。仮に俺の棺桶入りが二人の”足揚げ前”なら、コトはお前の”予測通り”だよ。跡目争いにも大きな影響を与える。無論、東西の大手双方に対してもな。それも全部承知しての上でだ。だが…、矢島にはこのことは言わんつもりだ。お前が判断して”こなせ”…」
「…」
何と言うことだ…
何十年この人と一緒でも、この衝撃だよ
この時、咄嗟に頭に浮かんだ
一昔前、会長がお気に入りだったキャバレーのホステスがこの人をこう評していたのを
”会長!完璧、イカレてる、でもイカしてる!”と…
...
会長は最後、呟くように俺に告げた
「剣崎…、県警のリークなどに甘えるなよ。”その法律”が世に降りる時、元号は昭和じゃなくなってるだろうし、今世紀末か来世紀に入る前後かもしれない。とにかく、時代は大きく変わっているさ。当然な。…だが、その目の前の”光景”から決して逃げるな。逃げれば、死んだ後も後悔することになる。それがよう、目で感情を表せない動物と人間の差だよ…。あくまで”人間様”の目線でだが…。この言葉、お前が死ぬ寸前には、絶対、思いだせよ」
「…」
言われるまでもなく、会長のこの言葉は生涯、俺の耳から消え去ることはなかったよ…
そして、これから1年後の”その時”…、俺は知ることになる…
余命幾ばくも無いと自覚していたであろう会長が、”あの二人”の運命を握っていた俺にこの言葉を発した、その深意を…
剣崎
会長との密談は、二人に増殖した”遠縁の娘”に及んだ
「…ケイコとは近々、二人で会おう。ここへ呼べ。”部屋”は麻衣と同等のものを借りてやれ。場所はあまり近くない方がいい。そうだな…、5キロ程度は離しとけ」
「はい…」
「それとつける人間だが…。極力、麻衣と同じモンにしとけ。メインは能勢あたりがいいな、ケイコには」
「あのう、麻衣には倉橋も直でつけてますが…」
「倉橋のイカレは麻衣だけでいい。ケイコには極力接触させるな」
「…はい」
「問題は麻衣だが…。ケガさせた少女へのケジメは、いつ頃になりそうなんだ?」
「おそらく来週中には…」
「そうか…。首尾は即持ってこい。…場合によっては麻衣とも直接会おう」
会長は、いつになくきめ細かい指示を俺に連発した
この”意味”を、俺は汲まなくてはならん…
この時、なぜかそんなことが俺の頭を巡ったよ…
...
「剣崎よう‥、”あの粉”な、正式に違法薬物に指定されたぞ。…それを知ってて、麻衣にもケイコにも差し出したんだ。未成年の高校生にな…。イカレてるのはわかってる…。だが、二人に粉を渡せて俺は心が躍ってるんだ…」
「…」
俺は完全に絶句した…
そして確信した
これはダブルミーニングだと!
...
「会長‥、それってまさか…!」
「おお、剣崎…、その通りだ。仮に俺の棺桶入りが二人の”足揚げ前”なら、コトはお前の”予測通り”だよ。跡目争いにも大きな影響を与える。無論、東西の大手双方に対してもな。それも全部承知しての上でだ。だが…、矢島にはこのことは言わんつもりだ。お前が判断して”こなせ”…」
「…」
何と言うことだ…
何十年この人と一緒でも、この衝撃だよ
この時、咄嗟に頭に浮かんだ
一昔前、会長がお気に入りだったキャバレーのホステスがこの人をこう評していたのを
”会長!完璧、イカレてる、でもイカしてる!”と…
...
会長は最後、呟くように俺に告げた
「剣崎…、県警のリークなどに甘えるなよ。”その法律”が世に降りる時、元号は昭和じゃなくなってるだろうし、今世紀末か来世紀に入る前後かもしれない。とにかく、時代は大きく変わっているさ。当然な。…だが、その目の前の”光景”から決して逃げるな。逃げれば、死んだ後も後悔することになる。それがよう、目で感情を表せない動物と人間の差だよ…。あくまで”人間様”の目線でだが…。この言葉、お前が死ぬ寸前には、絶対、思いだせよ」
「…」
言われるまでもなく、会長のこの言葉は生涯、俺の耳から消え去ることはなかったよ…
そして、これから1年後の”その時”…、俺は知ることになる…
余命幾ばくも無いと自覚していたであろう会長が、”あの二人”の運命を握っていた俺にこの言葉を発した、その深意を…



