勘違いでは?
 セリは冤罪だと言おうとしたが、しかし、幼馴染みの見たこともないような醜悪な顔に驚くあまり、何も言い返せなかった。

 どうしよう、どうしよう。何か、言わなくちゃ。
 そう思えば思うほど、唇は繕われたようにかたく閉じてしまう。

 セリの悪い癖だ。
 男性から強く言われると萎縮してしまって、何も言えなくなる。

 セリの生まれたルジャは、男尊女卑の国だ。

『女は黙って男に従え』

 そう言われ続けてきたセリは、男性に逆らうことが苦手である。
 シナモンもそれを理解していたから、セリが萎縮している時はいつだって優しく助け舟を出してくれた。
 なのに今は、その彼がセリを追い詰めている。