妖精である父は、シナモンにあまり関心がない。
 番であり、シナモンの母である冬の国の姫だけが特別だった。
 もともと息子に対して関心が薄かったが、妻を喪ってからは皆無になってしまったらしい。

 残されたシナモンはなんとか父に認められようと頑張っているが、あまり芳しくはない。
 そんな中、初めて誰かに頼られて、シナモンは嬉しかったのだろう。
 しかも、頼ってきたのは力の強い妖精と契約している、注目株のリコリス。
 彼は舞い上がり、現在は躍起になって犯人探しをしているらしい。
 
(おかしい。そんな展開、ゲームにはなかったけど)
 
 話を聞いたペリウィンクルは、首を傾げた。

「……えぇ? 近くで見ていたけど、本当に勝手に転んでいたよ?」

「うむ。三人の娘の特徴を聞いてよもやと思っていたが……やはりおまえだったか。もう一人はローズマリーだな?」

「そうだよ。でも、あの場にもう一人いたかなぁ?」

「私が聞いたのは、烏の濡れ羽色の髪に射干玉のような目、持っていたトランクは薄い衣に包まれていた……ということくらいだな」