二度目のマリッジリング

「誓います」

偽りの永遠を誓い、キスを交わす。萌音の初めてのキスだった。愛なんてものは何一つなく、何も感じないキスである。

（でも、これでいいんだよね）

祖父の幸せそうな顔を見て、萌音はホッとしながら諒の腕に自身の腕を絡ませ、幸せな新婚夫婦を演じたのだった。



あの日からもうすぐ一年が経とうとしている。もうすぐこの契約が終わるのだ。わかっていたはずなのに、萌音は心の中でモヤモヤとした気持ちを抱えていることに戸惑ってしまう。

（一体、この気持ちは何なんだろう……。こんなの、まるで本当に諒さんのことが好きみたいじゃない。そんなのダメなのに）

そんなことを考えていると、「できたよ」と諒に声をかけられる。萌音は「は、はい！」と上擦った声で返事をし、テーブルの方へ移動する。

「わぁ、おいしそう！」

テーブルの上には、ナスとベーコンのトマトソースパスタ、ブロッコリーとアボカドと卵のコブサラダ、オニオンスープが並んでおり、萌音が笑みを浮かべると、諒も優しく微笑む。