二度目のマリッジリング

「お見合いなんて、したくないな……」

昼休み、萌音が一人で持参したお弁当を食べながら呟いた時だった。

「なら、僕と結婚してくれませんか?」

そう声をかけてきたのが、この会社の社長である諒だった。彼は萌音より九歳年上で、所謂結婚適齢期である。

「実は僕も、「そろそろ身を固めろ」と周りからうるさく言われていてね。お互い利害は一致していると思うけど?」

そう諒に言われ、お見合いをしたくなかった萌音はすぐに結婚することを了承した。だが、もちろんこれは愛のない計略結婚である。そのため通常の夫婦にはないルールを二人で決めた。

一、婚姻関係はひとまず一年契約とする。

ニ、同居はするが寝室は別。性的接触は一切しない。

三、もしも好きな人ができた場合、報告をする。そして離婚をする。

「一年でいいんですか?一年で離婚をしたら、色々と言われるんじゃ……」

一年で離婚をすれば、祖父はまた心配してお見合い話を持って来るだろう。そう思った萌音に淡々と諒は答える。