そして迎えた四月一日。萌音は朝からどこか落ち着きがなかった。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
いつものように諒を送り出したものの、いつものように笑えているか自信がなく、ドアが閉まった刹那に萌音はため息を吐いてしまう。
いつも通りに洗い物をし、洗濯物を干し、掃除をして、今日の夕食の材料やなくなってしまいそうな洗剤などを買い物に行く。何かをするたびに、萌音はこう考えてしまった。
(今日で、これをするのは最後なんだ)
終わりがあるとわかっていたはずなのに、心が重く沈んでいる。自分で自分の感情がわからず、お昼ご飯を食べた後、萌音は柔らかなソファの上にゴロリと寝転んだ。
少しだけ眠った後、洗濯物を取り込んで畳み、片付ける。すると玄関のドアが開く音がした。
「ただいま」
諒の声がする。萌音は時計を見た。まだ十六時を少し過ぎた頃だ。
「おかえりなさい。今日、早いんですね」


