鞠の自宅最寄駅に降り立った二人は、すっかりオレンジ色に色づいた太陽を背に歩き始めた。
「鞠の家どの辺?」
「えと、ここから徒歩十分くらい」
「ふーん」
そうして駅から歩き出し、幹線道路沿いの歩道を二人並んで進む。
ただ、電車を降りる時に繋いでいた手を離すタイミングを逃してしまい、鞠の足取りは重かった。
地元なだけにどこで誰に目撃されるかわからない。
手を繋いでいたなんて言い逃れのない状況を心配していると、新の方から静かに切り出してきた。
「今日、ごめん」
「え?」
「鞠のこと嫌な気分にさせたよな」
「ち、違うそれは私の方。新くんに嫌な思い……」
そう言いかけてつい力が入り、新の手をぎゅっと握ってしまう。
すると、それに応えるようにわざと握り返してきた新は、少し不安げに微笑んでいた。
「避けられてるって思ってたけど、違う?」
「あ、ごめん。避け、って言うか。自信なくて」
「自信って何の?」
「それは……」
その時、前方から歩いてきたのは同年代の男女数人のグループ。
それを目にして言葉を詰まらせた鞠の異変を察した新は、直ぐ近くに公園へ繋がる出入り口を見つけて誘導した。
「ちょっと寄り道しよ」
「え! あ……」
ここは鞠が子供の頃から存在していた大きな敷地の公園で、奥まで進むとテニスコートやバスケットコートなどの運動場所もある。
整備された公園内の歩道の脇には高い木々がトンネルを作り、所々にベンチもある。
地元民にとっては緑溢れる憩いの場。
「いいな、こういう公園近所にあって」
「新くんの家の近くにはないの?」
「うん、マンションとか商業ビルしかない」
「都会って感じだもんね、あの辺」
幹線道路沿いの歩道を歩いている時よりは、すれ違うのはジョギングしている人くらいだから、人目を気にせずにいられる。
公園内の歩道を進みながら自然な会話が交わせるようになってきた鞠に新も安心はしたが、やはり気がかりも残っていて――。



