その後は駅ビル内のカフェレストランで軽いランチタイムを過ごし、雑貨店を回った次に本屋へと立ち寄ったところ。
ただ、行く先々で鞠が再確認したのは、新がいかに注目を浴びる存在かということ。
どの角度から見てもカッコ良さがダダ漏れていて完璧すぎる彼を、すれ違う人、特に女性の二度見三度見する視線の動きを何度も見かけた。
(そんな新くんの隣にいるのが、私でごめんなさいぃ)
学校ではあまり人前で並んで歩くことがなかったけれど。
街中でこうも他人に注目される新と歩いていると、鞠はどうしても引け目を感じてしまって徐々に不安が蓄積されていく。
しかし新は何かを思う様子もなく、気分を害さないようこの感情は表に出してはいけないと、鞠は懸命に笑顔を作った。
「鞠、欲しい本あった?」
「えーと、ごめんなかった。新くんは?」
「一冊。買ってくるから少しの間この辺で待ってて」
「うん」
本棚の陰から顔を出してきた新が、普段通りに声を掛けてきた。
レジへと向かうその背中を静かに見送る鞠。一人になった途端の心は次第に冷静な判断を下す。
これはデート、だけど錯覚してはいけない。
自分を好きだと言ってくれた新の気持ちを、受け止める強さも覚悟も、今の鞠にはない。
だからこんなこと、新の気持ちを知っているからこそダラダラと続けて良いわけがない気がして、胸を痛めた。
その時、追い打ちをかけるように聞こえてきたのは、可愛らしい服装と気合の入ったメイクで飾る二人組の女性の声。
「ねえ、今レジで会計してる人めっちゃかっこいいんだけど!」
「ほんとだ、でも絶対デート中でしょ。どうせ会計済んだら美人な彼女と合流するって」
「だよね。彼女の顔だけでもちらっと見てくか?」
「どうする? 大したこと無かったら」
「どうしよっかな、略奪でもしちゃう?」
おそらく新のことを話していたその女性たちは、笑い声を交えながら鞠のすぐそばを横切っていく。
何気ない内輪の会話のつもりの中、鞠の心にしっかりと傷をつけたとも知らず。



