すると、ゆっくり顔を上げた新の瞳はとても冷ややかで、不機嫌を纏っていた。
「雑談するなら帰れ」
「……え?」
「作業の邪魔、目障り耳障り」
「っ⁉︎」
初めて聞く新の辛辣な言葉に、鞠の作業していた手も止まってしまったが、
直に言われた紗耶は怒りと羞恥から、徐々に顔が赤らんでいく。
そして手に持っていたゴミ袋を新に向かって投げつけると、その場を走り去っていった。
気まずい空気だけが、残された鞠と新を包み込む。
「……ごめん新くん、私もついお喋りを」
「……」
雑談していたのは彼女だけではなく、委員である自分も。
新のお叱りは当然鞠にも当てはめられるから、謝罪の言葉を述べたものの。
そんな鞠に視線を向けることはなく、投げられて道端に落ちたゴミ袋を拾い、無言のまま作業を続ける新。
(怒って当然だよね……)
同じ委員として、紗耶と雑談する鞠の行動はサボっているようにも見えただろう。
新が真面目にゴミ拾いをしていたにもかかわらず、自分の行動は誤りだったと反省する鞠だが。
委員活動が終わる時間まで新は口を聞いてくれなくて、胸が締め付けられた。



