ゴールデンウィークが明けて、鞠はいつもの日常を過ごしていた。
ただ、一週間前に新とメッセージのやりとりをして以降、学校内で二人が関わる場面がなく。
言葉も交わさないまま、美化委員で行う校舎周りの清掃日を迎えた。
放課後、生徒玄関前に集められた美化委員は佐渡委員長の説明に耳を傾ける。
「クラス毎にペアになって、配分されたエリアのゴミ拾いをお願いしますね!」
軍手に火バサミと取手付きのゴミ袋を持った鞠と新は、グラウンド裏のゴミ拾いを任された。
ようやく二人きりになれたから、会話を交えて現場に向かうと思っていた鞠。
だが、新は目配せすることもなく勝手に歩き始めてしまう。
(……なんか、不機嫌?)
今日、学校で嫌なことでもあったのか。
先頭を歩く新の背中を心配そうに見つめながら、鞠がそう思っていると。
たまたま通りかかった、名前も知らない他のクラスの女子が、新に駆け寄ってきた。
「新ー! 委員活動?」
「そう、ゴミ拾い。紗耶は?」
「帰宅途中だよ。真面目に参加して偉いね、私も手伝ってあげる!」
「え?」
すると新の持っていたゴミ袋を颯爽と奪い、上機嫌な様子の「紗耶」と呼ばれた女子生徒。
そんな姿を見ただけで新への好意を察した鞠が居た堪れない気持ちを抱くと、紗耶は鞠に視線を向けて同調を求めた。
「人数多い方がいいし! 三石さんもそう思うでしょ?」
「あ……うん、ありがとう」
作り笑顔で応えると、鞠を味方につけた気分の紗耶は新に寄り添ってサポートを始めた。
その横で沈黙したまま作業を続ける新に、鞠はハッと気がついてしまう。



