するとようやく返事を受信したはいいが、その内容は今以上に鞠を混乱させた。
【何もないけど、鞠と話したかっただけ】
その一文に翻弄されている自分に気付いた途端、心臓が苦しいと感じるほどに大きく脈打つ。
普段異性からモテている新のことだから、話す相手なんてたくさんいるはずなのに。
数ある女の子の中から、鞠を選んだのはどうして?
それとも――。
『新って昔からあんな感じだから女の子寄せやすくて』
『鞠ちゃんが傷つくことがなければいいなと』
散々女の子に送った後の、適当に選んだラストの一人だったりして?
よぎる唯子の言葉が、鞠を捻くれた思考へと導いていく。
素直に喜びたい自分と、どこか疑ってしまう自分。
だけど一つだけ、はっきりしているのは。
【わかった!休み明けの委員会のことでしょ?校舎周りのゴミ拾い大変そうだよね〜】
新の言動一つ一つにときめいていたら、自滅してしまう。
決して新との付き合いが面倒というわけではない。
だけど、これ以上深くのめり込んでしまうわけにもいかない。
(新くんと私は、ただの友達だよ)
しばらくして、再び受信した新のメッセージには【うん】と素っ気ない一言だけだった。
そこからどうやって話題を膨らませたら良いのか鞠が頭を悩ませていると、
続いて新からおやすみのスタンプが送られてきたことで、少しホッとしてしまった。
まだ就寝するには早い時間帯だけど、会話が続かなさそうと判断した新が早めに切り上げたのかもしれない。
所詮、暇つぶしで送られてきたメッセージであるというイメージを、より強く感じた鞠。
(私もおやすみスタンプ送ろっと……)
くっきりと一線を引いたのは、とぼけたフリして遠ざけたのは。
(新くんと、長く仲良しでいたいと思っているからなんだよ)
そう自分にも言い聞かせて、枕に顔を埋めた。



