「疲れたー!」
夕日に照らされオレンジ色に染まる自分の部屋に帰ってきた鞠は、制服のままベッドにダイブした。
正午に終えた部活の帰り道。
運動の後だから仕方ないが、腹が減ったと駄々をこねる北斗。
彼女の唯子と二人で食べに行けばいいのに「今日のお礼に北斗が奢る」という唯子の言葉に鞠の気持ちは揺らぎ、北斗は突然の出費を心配して財布の中身を確認する。
結局、誘われるがまま三人で駅前のファミレスへ向かい、夕方まで付き合わされてしまった。
そしてすっかり回復した北斗は今、唯子を自宅前まで送っている最中だ。
「“長く仲良しでいたい”かぁ」
唯子から聞いた初めての想いは、鞠の思考を揺れ動かした。
幼馴染の北斗とはなんだかんだ言ってずっと一緒にいて、わざわざ長く仲良しでいたいなんて考えてもいなかったけれど。
恋人関係というものは、ボタンを掛け違えると長く仲良しでいられるものではないんだ。
それは、新の周りに群がって告白を我慢する女子たちにも共通していた気がした。
(好きな人と長く一緒にいたいのは、みんな同じなんだよね……)
関係性はどうであれ、長く一緒にいたいと言う気持ちは恋をしている誰もが思うこと。
では、それでも告白する人の心理は何なのだろう?と鞠が考えていた時。
机の上に置かれたスマホが震えた。
北斗からのお礼メールかと思った鞠は、ベッドに横になったまま机の上に腕を伸ばす。
指先に届いたスマホを手繰り寄せ、画面を確認すると。
メッセージの宛名を目にして、驚きのあまりに顔面へとスマホを落とした。
「いった……え?」
連休中、特別な用もないから連絡を取っていなかった新からの、突然のメッセージ受信。
恐る恐るトークルームを開くと、唐突に【今暇?】とだけ送られていたので、現状をそのまま文章にのせた。
【バスケ部の手伝いあって、今帰って来たところだよ〜】
【へぇ、じゃあ唯子たちにも会ったんだ】
【うん。それより何かあったの?】
今暇かと尋ねられたということは、何か用事があるのだと思った。
しかし鞠の問いかけの後、メッセージのやり取りに少し間が空いてしまい不安に駆られる。



