駅から歩いて数分の、地元では長年愛されているフードエリア街。
左右にはカフェやレストラン、デザート店が立ち並び、休日は多くの若者や家族連れで賑わう。
そんな場所を平気な顔して歩く新と、少し後ろを恐る恐るついていく鞠。
その不自然な行動に見かねた新は、目を細めながらキッと振り向いた。
「何で隣歩かないの」
「え! あ、歩いてるよ!」
「しかもすっごく怯えたように」
「う……」
やはりバレていた。鞠が取っていた行動は“新と並んで歩かない”ようにすること。
万が一にも同じ学校の生徒に見られたら面倒なことになりそうだし、
通行人がすれ違う度に二度見してしまう程のルックスの新なのに、一緒に歩いているのが鞠では月とスッポン。
いや、王子と平々凡々民だ。
しかし、そんな自分の行動で新に「避けられている」と思わせるのも可哀想に思って。
徐々に距離を詰めていくと、さりげなく疑問をぶつけてみた。
「と、ところで一条くんは何であの場所にいたの?」
「ここ地元だから」
「え! そうだったの? じゃあ……」
「さっき会った唯子と同じ中学」
「だから仲良かったんだ」
「仲良くはない、ただの顔見知りなだけ」
だったら尚更、自分に付き合わずに帰宅したらいいのに。
共に歩く新の後ろ姿を見つめながら、鞠が申し訳なく思っていると。
「着いたよ」
「え、どこどこ?」
新の指差す方向に視線を向けて、さっきまでの沈んでいた気持ちが嘘のように爆上がりしてきた鞠。
そこにはライトベージュのレンガ調の壁と、淡いピンク色の軒がいかにもデザートを取り扱っているお店風で。
店内へとつながるドアと、テイクアウト受付用のカウンターも店先に設置されていた。
可愛い外観にハイテンションになる鞠は、新を置き去りにして小走りで駆け寄ると。
ドアに貼られた一枚の紙を見て、愕然とした。



